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【小説】若手エースレスラー、女子高生に敗北

※今から約3年前に私が書いたミックスファイト小説です。挿絵はありません。 【本編】 「奈良井賢人、JKレスラーに敗北!!」 とあるスポーツ新聞の一面に踊った衝撃の見出し。 デビュー以来負けなしの若手レスラー奈良井賢人を倒したのは期待の女子高校生レスラー、河井真央だった。 近年、あらゆる競技で女子選手の記録が男子選手の記録に近づいていき、少しずつこんな声が上がるようになっていた。 「もはや男女混合での競技をおこなっても良いのではないか」 それでも公式競技として男女混合で競技を行うことを倫理的観点から疑問視する声も多く、なかなか実現しない現状があった。 そんな中でいち早く声をあげたのが競技プロレスであった。 全日本競技プロレス協会は、競技プロレスの人気の低下を懸念し、プロレスを盛り上げるべく男vs女の試合を組んだのだ。そして実現したのが 【奈良井vs河井】 身長168cm、体重65kg、男子フェザー級の奈良井は女子との試合にうってつけであった。 対する河井は身長171cm、体重66kg、女子ミドル級で、男子の奈良井よりも体格が大きく、人気も高い。 「奈良井選手にお聞きします。今回相手は16歳の現役女子高校生となりますが、どのような心境でいらっしゃるかお聞かせ願えますでしょうか。」 記者会見は嫌いだが、今回ばかりは本当に出たくなかった。そう思いながらなんとか言葉を捻り出す。 「そうですね...。相手の性別も年齢も社会的立場も関係ありません。リングの上で出会えば、対戦相手です。」 女子との試合を前にしても臆さず、淡々とインタビューに答える奈良井。 この試合に出ても、男子選手は何一つ得をしない。試合をして勝てば一定数の女性を敵に回すことになる。かといって手を抜いて負けたら負けたで大炎上だ。しかし、それでも奈良井がこの試合を受けたのは父親の残した多額の借金のためだ。競技プロレス業界を変えるこの歴史的一戦は出場選手に普通では考えられないほどのファイトマネーを約束している。借金返済をエネルギーに新人トーナメントも優勝した奈良井。今回は相手の名誉を守りつつ、試合に勝つのが仕事だ。 「では、河井選手。今試合を前に今のお気持ちをお聞かせください。」 「あ、えぇ〜...。」 まだ16歳、現役女子高校生の河井は半年前にデビューしたばかりだが、先月の試合では女子ミドル級新人トーナメントの覇者であるyUMAを破っている。河井はまさに期待のスーパールーキーだ。 「奈良井選手はほんとにずっと憧れの選手で、私が小学6年生のとき彼の試合を初めて見て、それがキッカケでプロレスを始めたんですよ。だから、こうして試合させて頂けるだけで本当にうれしいです。一ファンとして、奈良井選手の試合はたくさん見て研究できているので、全力で、戦いたいです!」 そして試合当日。 プロの男子選手と女子高生のハンデ無しの一戦に会場は超満員。 リング上で向かい合う二人。 かなりガッシリとしてはいるが、どう見ても河井の肉体は女子高生。 鍛え上げられた奈良井の肉体に太刀打ちできるようには見えない。 カーン! 試合が始まった。 試合序盤は奈良井が一方的に力で押しており、河井が追い詰められるシーンが多かった。 如何に体重では女子の河井が勝るとはいえ、やはり筋力では男の方が上。会場全体が奈良井の勝利をうたがわなかった。 1ラウンド目は終始奈良井が攻め、一方的な展開で終わる、はずだった。 なんと1ラウンド目終盤、奈良井のパワーボムを耐え、逆に河井がパワーボムを決めたのだ。突然頭から落とされた奈良井は一瞬動けなくなり、カウント2.5まで追い込まれた。 カーン そこでゴングがなり、第1ラウンド終了をつげた。 会場がどよめく。16歳の女子高校生である河井が男子レスラーの奈良井にパワーで押し勝った。 「今の見たか?奈良井のパワーボムに耐えて逆に真央ちゃんが投げちゃったぞ」 「真央ちゃんがパワーで押し勝ったってこと?」 「バカ、あれはパワーで押し勝ったことにはならないよ」 「真央ちゃ〜ん!」 コーナーでそんな声を背に奈良井は気持ちを整えていた。 なんだ観客ども。あんなの... まあでも、16歳の女子高校生とはいえ、プロの選手、しかも体格も大きい。こういうこともある。あの時俺は完全に気が抜けていた。男と試合する時と比べて余りにも技も決まりやすかったし、河井の動きのキレもやや鈍かった。だから俺はつい油断してしまった。きっとあの女も俺と戦ううちにスピードやパワーに慣れてきたんだろう。次のラウンドは流石に気を抜けないな。 カーン 第2ラウンドを告げるゴング。 「ハァッ!」 いきなり低空タックルを仕掛ける奈良井。しかし... ガッ! 「...なっ!...え?」 なんと奈良井のタックルは河井に完全に受け止められていたのだ。 ありえない。奈良井はこのタックル、少しの加減もしなかった。階級が二つ上の男子選手だってこのタックルで倒したこともある。 それを、まだ16歳の女子高校生に? 「奈良井さん、もっと本気で来てくれていいんですよ?」 河井はそう言うと、素早く右腕を奈良井の首に回す。フロントチョークが極まった。 「ぐぅっ...」 精神的にも相手を優位に立たせるわけには行かないので、奈良井は呻き声を漏らすつもりはなかった。 しかし、河井のスリーパーは強力であった。過去体験したスリーパーの中でもここまで強力なものはなかったかもしれない。それは女の腕が男よりも細く、首に絡みやすいからか、それとも男よりも女の方が強いからなのか。 そんなことを考えている間も奈良井の首は締められ、四つん這いにさせられる。 上からは河井の柔らかな肉体が圧倒的な重圧を持って奈良井を床へと押し込む。 奈良井は腕で、膝で、今にもマットに押し付けられてしまいそうな体を支える。しかし、それに反して少しずつ、確実に、マットは近づいていく。 「頑張りますね、奈良井さん。」 河井の幼さを残す柔らかい声が上から聞こえてくる。 「気持ちは分かりますよ。これ、ただの試合じゃないですもんね。女と男、どちらが上なのか決める戦いですもんね。緊張しますよね。」 河井は更に力を込める。 抗えども抗えども、奈良井の顔面はマットに近づく。 「それでも私は、全力であなたと戦います!」 そしてついに... ベタン! 体を支えていた屈曲な腕が耐えきれなくなった。仄かに口に広がるゴムのような味。一瞬の困惑の後に奈良井は何が起きたのかを自覚した。 第1ラウンドにパワーボムを食らったときとは違う。今回は何の油断もなかった。その上で、男の体が女の肉体に屈してしまったのだと。 しかし尚も首は締められ続け、頭が働かなくなるのを感じる。なんとか藻掻くが、体が思うように動いてくれない。 すると、奈良井の首を締めていた腕がするっと抜けた。 河井がわざと奈良井を技から開放してやったのだ。 「...え」 「奈良井さん。一応、女の私と戦うってことで、精神的な乱れもあると思います。スポーツマンシップに反しますが、試合を仕切り直しましょう。」 会場がざわつく。 レフェリーの指示もなく技を解いて試合を仕切り直す。競技プロレスではこのようなことは基本的に起こらない。 しかし、河井は憧れの奈良井との試合をここで終わらせたくないという気持ちもあった。 河井は少しだけ気づき始めていた。もしかすると、自分は奈良井に勝ててしまうかもしれないと。奈良井のファンであったが故に、奈良井のタックル中に生まれる首まわりの隙に気づいていた。フロントチョークは見事に極まり、その上、奈良井を抑え込むことまでできた。このままカウントを待てば、一本とれていたのだ。 しかし 「私はまだ、あなたと戦いたいです!」 両者が向かい合い、試合が再会。第2ラウンドは残り2分。 両者組み合う。 しかし、恐ろしい結果が待っていた。 なんと、手四つの力比べで奈良井が押されているのだ。 単純な筋力と筋力の戦い。奈良井の腰が少しずつ仰け反っていた。 これには河井も奈良井自身も驚いていた。 実は先程、河井のチョークスリーパーで胴体が地面につくのを支えていたとき、奈良井の腕には疲労が溜まってしまっていたのだ。 「ぐ、ぐおぉ」 「どうしたんですか?奈良井さん!負けるんですか!!」 「そんなわけ...ねぇだろっ!...ぐおぉ」 奈良井の体はどんどん押し込まれていく。 奈良井にはすぐに手四つを解いて、距離をとって打撃で攻めるという選択肢もあった。しかし、男が女との手四つから逃げることはその時点で負けを認めることと同じであるようにも思えた。 「うぐぅ」 足にすべての力をかけ、なんとか踏ん張る、しかし、腕は河井を押し返せず、腰が反りきってしまっている。 そして ドタン! ついにリングに倒されてしまった。 カーン! その時、第2ラウンドの終了を告げるゴングが鳴った。 会場がざわつく。 男子の期待を背負った若手のエース、奈良井賢人が16歳の女子高校生レスラー河井真央に完全に力負けした。 「真央ちゃん...やべぇ。」 「奈良井、大丈夫かよ。」 そしてコーナーでは脂汗をかいて呼吸を整える奈良井と、少し困った表情でそれを見る河井があった。 奈良井さん、調子が悪いのだろうか。 奈良井のことを心配する気持ちと、少し残念に思う気持ちが河井の中で入り混じっていた。 ずっと憧れていた奈良井賢人。フェザー級でありながら、ライト級、ライトウェルター級の選手にも勝利を収める華麗なテクニック。ルックスも申し分ない。同じ業界で戦う彼に憧れ、そしてついに同じリングの上で戦える。当然敵うはずがない。協会も男女混合なんて結果の見えた試合を組むなんてどこかおかしい。それでも河井は喜んで志願した。 彼と肌を合わせることができる。その結果ボロボロになってしまっても良い。私の技を、彼に受けて欲しい。彼の技を全身で堪能したい。 それはレスラーとしての願望であり、一人の女としての願望でもあった。 学校の授業中も、奈良井との試合の妄想をした。毎日のトレーニングはいつも以上に気合が入った。試合が決まって今日まで、夢のような日々だった。 ところが目の前にいるのは、自分の技に圧倒されてしまった奈良井賢人。 きっと今日は調子が悪いのだと思う反面、頭のどこかで分かっていた。 女である私の方が強い。 その事実に...。 カーン! 第3ラウンドが始まった。 「すごいね、河井さん。思わず圧倒されたけど、こっからはそうは行かないよ。」 そういう奈良井から焦りが見える。当然だ。女に完全に主導権を握られたのだ。 「今日は調子がいいです。このラウンドで勝ちますから。」 河井はそういうと走り出し、ドロップキックの体勢に入る。が、奈良井はそれをいなしていく。 流石は若手エースだ。先程のラウンドがどれほどひどいものであってもしっかりと調子を整えてきている。河井はホッとして、再び臨戦態勢に入った。 奈良井に今度はタックルのような形で飛びつく。 しかし奈良井はそのタックルを潰していく。 そのまま奈良井は河井をリングに押し潰していく。 そのまま首と足をとり、STFの形が完成した。 「河井さんは確かに強かったけど、男のSTFからは逃れられない。ここでギブアップするのも一つの手じゃないか?」 先程までとは打って変わって、いつもの調子を取り戻しつつある奈良井。 それに対して、なんとかロープに手を伸ばす河井。 「無駄だよ。君よりも大きな男を仕留めたこともある。逃げられないよ。」 しかし、少しずつ少しずつ、河井はロープに近づきつつあった。 奈良井は若干の焦りを覚えつつ、全力で締め上げた。 「ぐっ、くぁあ...っ!」 河井の喉から可愛らしい悲鳴が漏れる。しかし、河井は変わらずロープに近づき続ける。 そして、 「ロープっ!!!」 なんと、奈良井の技を抜けられてしまった。 競技プロレスではロープブレイク後は両者立ちが上がっての仕切り直しとなる。 カーン 試合の仕切り直し。 しかし、奈良井は焦りを引きずっていた。 その焦りから、なんの工夫もないタックル。 そして河井は、その焦りを決して見逃さない。すぐに奈良井の左に回り、背後をとったのだ。そのまま、右腕を奈良井の首に回し、両脚で胴を締め上げる。一瞬の出来事であった。胴締めスリーパーが出来上がってしまった。 「がっ...!あぁ!」 奈良井は一気に呼吸を奪われる。 「奈良井さん!もうあなたの負けです。降参してください!!」 「こ...んなので、ギブするわ...ぐあぁ!」 奈良井の喋っている途中、更に強く締め上げる。 「私はまだまだ強く締め上げられる。でももう今の段階で限界でしょう?我慢しないでください。」 嘘だ。 奈良井の中で信じたくない事実が現実味を帯び始める。 古来より獣を仕留めるために進化してきた逞しい男の肉体と、子を守り癒やすための柔らかな女の肉体。 強いのは男のはずである。しかし今、奈良井の鋼の腹斜筋は河井の柔らかな太腿に締め上げられ、今にも砕けてしまいそうだ。 いや、柔らかな太腿というには語弊がある。確かに柔らかいのだが、その柔らかさの奥に、圧倒的な程の圧力を感じる。 男に締め上げられる以上の圧力を。 嘘だ。 男より、女の方が 「強い訳が...」 「奈良井さん。女子高生の技ですよ?抜けられないんですか?」 河井の吐息が耳を擽る。どこか余裕そうな声色。 足をばたつかせ、両腕で河井の右腕を首から引き剥がそうとする。しかし、河井の腕も両腿もビクともしない。 「このまま無様に白目むくより、潔くギブアップした方が男らしくないですか?」 「バ...カに、し...や...が」 「ちょっと、もう日本語喋れてないじゃないですか。」 「おれ...は...ま...負...けて...な......」 パタリ。 奈良井の腕が落ち、動きが完全に止まった。 「最後の方、手加減してあげてたんだけど...」 カンカンカーン 試合が終わった。静まり返る会場。 この日、若手エースの男子レスラーが、デビュー間もない女子高生レスラーに敗北した。 蓋を開けてみれば試合は、女子高生レスラーのほぼ一方的な展開。 証明されてしまった。女でも男に勝ててしまうということが。 二人の対決から数日後、とある研究論文が注目された。 その論文は女性の酸素取り込みの効率は男性より20%ほど高いことを示していた。 そして、酸素を上手く活用できるということは、身体能力にダイレクトに影響する。 そしてそれは、筋力、肺活量、筋持久力、体幹、脳の全てを活用する肉弾戦の場において顕著に現れる。 今回の試合と論文の内容を受け、全日本競技プロレス協会はとある発表を行った。 『今後もこれまで同様、男女混合の試合は行わない。やはり男女での力量差は大きかった。』 (おわり)

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アップデートが楽しみで、少し写真があれば、楽しみにしている方が良い

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