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新人漫画家の話②デビュー~ネーム全没時代

モーニングで色々あって作品を作れなくなり、再度持ち込みを経て流れ着いた先はヤンジャン編集部でした。


ヤンジャンで新人賞を受賞させていただき、ヤンジャンで再びデビューした私は

担当編集のYさんとともに次回作の読み切りに向けて、ネームを描くことになりました。

この担当編集Yさんという人は、今までの私の漫画の作風や漫画への考え方に一番影響を与えた、いろいろな意味でヤバッ・・・・ものすごい人間です。

一応言っておきますが、私はYさんの事が大好きで、今でもたまに雑談電話したりするくらいには仲良しです。あと、今となっては本当にすごく感謝しています。

ということで今回はほぼ担当編集Yさんの話になります。


新人賞を受賞したのち、ヤンジャンでの2作目を作るべく、

わたしは早速ネームをYさんに持っていきました。

実際に持って行ったネームの一部↓


あらすじ

地球温暖化に対する社会政策として、日本政府は

植物を大量に街に植え付けるという政策を発表。

地球を守るため、日常生活の地球にやさしくないあらゆることが禁止されていく東京。

そこでくらす住民である社畜サラリーマンの主人公。

ある日出会ったのは、頭に草の生えた謎の少女だった・・・



担当編集のYさんは言いました。

「うん、やっぱり女の子がかわいいね!よし、じゃあこの女の子をとにかく全面に出して。

『〇〇さんは●●!』的な漫画がよくあるでしょ?

ああいう感じで、これからはとにかく女キャラを前面に押し出した作品を描いていこう。

南さんは勉強が得意みたいだから、医療ものとか意外とハマるんじゃないか。

異世界転生とかも最近人気だから読者が取りやすい。

南さんの性格は熱い!情熱的だ。だから熱い男主人公なんかもハマるかもしれない!ゴールデンカムイやキングダムみたいな!」


私「えっ…?い、異世界転生・・・?熱い男主人公・・・?

でも正直、私の作風はそういったメジャー路線からは外れていると思います・・・。

私が描きたいものは、ファンタジーっぽい自分で作った世界観、やさしくて可愛い登場人物、

根本には社会派なテーマがあり、可愛いけれど実は倫理観を問う深い作品・・・みたいなぁ・・・・」


Yさん

「南さんいいですか?大事なのはとにかくキャラクターです。これは絶対的な事です。

キャラさえしっかりしていれば、世界観やストーリーなんてのは後からいくらでも作れるんですよ。

ワンピースのルフィは海賊王を目指していますが、ルフィがサッカーしてても結構面白いと思いませんか?

それは、ルフィというキャラが圧倒的に強く個性のある奴だからです。ルフィは海賊王を目指してなくても、別の事やらせても絶対に面白いんです。」


私「な、なるほど・・・一理ありますね。たしかに、私もそうだと思います。

漫画で大事なのはキャラだって、よくいいますからね。 わかりました、次からはキャラを立てるように心がけてみます。」


新作ネームはこうしてあっさりと全没になりました。

その時の心境としては、

「結構設定とか練ったのに、全没かぁ・・・。私は面白いと思ったけど。

でもまあ、こんなもんか。新人だしな。没になるのは普通だよね。

よし、頑張ってネームを一杯描こう!!

たくさん描けば、きっと自分もネームがうまくなって、いつかネームが通るに違いない!!」

という感じで、このころは没に対してとても前向きでした。


こうして私はすぐに次のネームを描き始めました。


次のネームはYさんに言われたことを意識し、

女の子が一番活躍するような筋書きが作れる話を考えました。

女の子が実は超能力者で、ビシバシ事件を解決してかっこよく活躍する!みたいな漫画でした。

Yさんは言いました。

「なんかちょっと違うんだよな・・・南さんに求めてる女の子はこういう描き方じゃなくて、たとえばだけど、もっとこの女の子のエロくて可愛いところを見せてほしい。乳首とか見たい。」

全没でした。


次のネームは「恋する空中魚」の元になった漫画で、男の子がストレスにより心に海を発生してしまう子で、女の子は男の子をひっぱってくれる感じの子、そういう可愛い二人のラブコメ。


Yさんは言いました。

「こうやって男になんか属性をつけちゃうと、女の子の出番が少なくなるでしょ?こういうのはあんまり良くない。

もう、本当に女の子はかわいいよ。そこに文句はない。南さんの描く女の子が、僕は大好きですよ。だからもっと、たくさん見たいんです。きっと男性読者もそう思ってますよ。早く脱いでくれって。」

全没でした。


そのあともひたすらネームを描いては全没、を繰り返しました。


この時に一番問題に思っていたことは、ネームの直しにさえ進めないことでした。


ネームの直しとは、「このネタ自体はいいから、ちょっとここだけ直して。」というもので、次に進めるという合図です。

ネームの全没とは、「ネタからして根本的にダメだから新しいの0から作ってきて」ということです。

私は、ヤンジャンでの受賞から半年くらい、ネームの全没しかありませんでした。


それでも私は毎日新しいネームを描いていました。

でも、あまりに次に進めないので、私も少しずつ考え方が変わっていきました。


これはもう、ある程度Yさんの好みに沿ったネームを描かないと通らない。

私が描きたい優しい世界、可愛い世界はもういったん置いておこう。悲しいけど・・・

今までの全没になったキャラ達・・・私の力不足によって死なせてしまってごめんね・・・。

ここからは、考え方を根本的に変えよう。


・・・舞台はダークな、虫に汚染されているという世界観。最近鬼滅とか流行ってるし、ダークファンタジーぽいのはYさんもきっと好きだ。

男主人公はクールだけど熱い主人公。Yさん、きっと大好きだ。

ヒロインの胸は大きく、そしてエロく、しかもなんと作中でバケモノたちにエロい感じでレイプ的に襲われる!!Yさん大興奮間違いなし!!!

男主人公は苦境に立たされながらもバケモノと戦って、ヒロインを助けて・・・・!これだ!!!!!少年漫画の王道だ!!!Yさん!!どうですか!!?!?


Yさん「・・・・いいですね! 面白いです!これ、直してみましょうか。」


ヤッター!!!!!!!

初めて、ネームが直せることになりました。もう・・・次に進めることが、本当に本当に嬉しかったです。

こうして、王道少年バトル漫画的なものを、掲載に向けて直していくことになりました。


直し1回目。

Yさん「ヒロインの性格がよくわからない。ヒロインの登場をもうすこし増やせない?」


直し2回目。

Yさん「もうちょっとここを・・・」


直し3回目。

Yさん「やっぱりここが・・・」


直し4回目。

Yさん「以前のほうがまとまってましたね」


直し5回目。

Yさん「うーん、悪役変える?w」


直し6回目。

Yさん「虫の設定取っちゃおっかw」


直し7かいめ

私「うわあああああああああああああああああああああ!!!!何!?!?!?!?Yさん!?!?!?!?え!?!?ハッ!?!?

何回直すんですか!!!無理ですよ!

っていうかもうなんか何が面白いのか忘れたし!!

直しすぎて元の原型無いし!何が描きたいのかも自分で分からないですよぉぉお!」


Yさん「そ、そお?💦僕は行けるとおもったけどなー。

まあ南さんがそういうなら、しょうがないですね。ハハハッ

また新しいの作ってきてください。」


・・・・この件で、私は心が折れてしまいました。

Yさんの事だけを想って、自分が描きたいものも分からず、自分の好きなものを抑えて。ただただYさんに届けるためだけに、描いたのに・・・

そこまでしても、Yさんには届かなかった。届けられなかった・・・・・・。

(今振り返るとこの思考が良くなかったです でも新人漫画家がこうなるのは仕方ない事です。)


気づいたら2020年の秋で、ヤンジャンでの新人賞の受賞から7か月以上が経ってました。20代前半の若者(笑)が、遊びに行かず誰とも会わず引きこもって毎日ネームして、ただただ時間だけが過ぎました。

私は思いました。

あれ、やばいかも…。もしかしてこれ一生ネーム通らない?

1年、2年、3年、もしかしたらずっと通らないかも。まったく先が見えない。漫画家になってるイメージが湧かない。

読み切りでさえ通らないのに、連載とか一生不可能なんじゃないか?

どうしよう。 早く次のネタを考えないといけないのに、全く思い浮かばない。

・・・・ってか、面白いって何だっけ?

新しいものを考えても「こういうのはYさんは通さない」とすぐに思ってしまって、自分でネタを否定して無かったことにしてしまう。

自分の漫画のキャラ、優しくて可愛くて好きだったはずなのに、自分の世界が好きだったはずなのに。もう、自分が何が好きなのかも何も分からない・・・。

毎日泣いてました。


その後Yさんに電話しました。

私「Yさん・・・すみません。ちょっと漫画制作を休もうと思います。旅行したり、北海道帰ったりしようと思います」


Yさん「そうなの?大丈夫?

ヤンジャン編集部は南さんのことすごく期待してるよ。

新人賞取ったときも、上司が、良い作家さんがウチに来てくれた、ってすごく喜んでた。絶対に才能あるよ。今度一緒にごはん食べに行こ。奢るからさ」


私「ありがとうございます。」

Yさんは優しかった。Yさんは本当にいい人なんです。ちょっと頭がおかしくて、狂ってるけど…。

優しい言葉を掛けられても、気持ちは晴れず、ただただ辛かった。

だって、ネームが全く通らないんだもの…。先が見えないんだもの…

本当にこの先どうしよう。分からない。辛い…。

鬱で何もやる気が起きなかったです。

北海道帰ったり、旅行したり気分転換したかったけど、体が動かなくて、結局どこにも行かずにずっと家に居ました。





それから1か月後。

突然、ヤンジャンの副編集長から電話がかかってきました。


次回に続く

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