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sasayaka
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Redemption

プロのリングという舞台で、私たちは初めて対戦相手として向かい合う。 彼女と戦ったことはない。でも私は、彼女がこの上なく手強いことを知っている。

ショートカットに青い瞳をした彼女は、リング上に羽のように舞い降りると白い歯を見せながらニヤリと笑った。 その笑みは、一見するとこれから始まる戦いへの興奮が現れたものにも見えるが、彼女なりに不安を払拭するためのものかもしれない。 いくら天才とはいえ、彼女も人の子だ。 見事に鍛え上げられた彼女の体は、これまでに積んできたキャリアの重さを物語っている。 彼女は最後に別れたあの時からさらに、確実に強くなっている。 彼女の様子を観察しながら、いつの間にか私の唇にも笑みが自然と浮かんでいた。興奮と不安と色々なモノが混ざった、言葉にはできない感情の渦が私を支配する。 彼女には敵わないかもしれない。 でも私も、彼女を超えたい一心で今日までの日を過ごしてきた。 お互いが相手を見定めているうちにあっという間に時間が過ぎ、レフェリーのコールが耳に届く。 そして試合開始のゴングが、鳴った。

その直後、急にアクセルを吹かすように、私たちのトップギアのパンチがお互いの顔面を捉えた。

鈍い炸裂音が響き渡り、首から上が後方へ弾け飛ぶ。 いきなりの真正面からの打ち合いに、会場がどよめく。 その一発だけで意識が別の世界へ飛んでしまいそうだったが、何とか繋ぎ止めて持ち堪える。 彼女もよろけながら距離を取り、 全く闘志の衰えていない眼差しを私に向ける。 思っていた通り、いや、それ以上の威力。 徐々に感覚が戻りつつある唇から血の味がし、彼女と対面している現実を噛み締める。 そう、いま、わたしは、あの天才と戦っているのだ。



私と彼女は、大の親友だった。勉強も遊びも、常に私と彼女で1セット。

彼女の素直さ、真っすぐさが、私も大好きだった。

小さい頃から親の影響でボクシングを習っていた私は、ある時彼女を私の所属しているジムに誘った。

自分の世界に彼女を連れ込んで、もっともっと彼女と色々なことをしたかった。

「え、ミユちゃんボクシングやってるの!?すごい!私もやってみたい!」

そう答える彼女はいつものように眩しく、 その答えが嬉しかった。

私が所属していたのは業界ではかなり名の知れた、ハードパンチャーがひしめく強豪ジム。

私は当時のアマチュア女子の中ではエースみたいな扱いで、 会長や先輩からもよく褒められていた。信じ込んでいた。 私には天賦の才がある、と。


しかし、ある時気づいてしまった。

彼女の方が、私より遥かに歴が浅い彼女の方が、 「本当の天才である」ということに。


彼女がジムに入会したての頃、私は彼女に付きっきりでボクシングを教えた。

ふざけ合い、 笑い合う時間は幸せそのものだった。

しかし、まもなく彼女の異常な上達の速さに気付いた。 少しコツを教えると、彼女は「こうかな?」と言ってすぐにパンチを再現し、自分のモノにしてしまう。

まるで、ボクシングの動きそのものが彼女の遺伝子に組み込まれているかのように。


やがて周囲もその才能に気付きはじめ、女子ボクサーの中で賞賛の対象は私から彼女へと移っていった。


それでも彼女が私に横柄な態度を取ったりすることはなく、むしろ無邪気に私に一緒に練習したいとせがんでくるのが常だった。


私は、そんな彼女のことが疎ましくなっていった。

才能を見せつけられるたびに、 彼女との壁を築いていった。

彼女をこの世界に連れこんだのは私なのに。


会長が、彼女と私の試合を提案したこともあった。

でもその直後、私はジムを退会しボクシングを辞めた。


私は逃げたのだ。

才能の優劣が明らかになるのが怖いから。

彼女にとって強い存在のままでいたいから。


それから地元を離れて進学して、 私は学生としての日常を謳歌しようと決めた。

彼女が心配して連絡をくれたことが何度もあったが、私はそのすべてを意図的に遮断した。

逃げ出した自分の過去に向かい合うことが怖くて、ありふれた日常に身を委ね続けた。


しかしある時、彼女がボクシング界の若手スターとして注目されているというニュースが目に飛び込んできた。あの才能はやはり、本物だったのだ。

固く蓋をしていたはずの過去が、重い扉をぶち破って私の目の前に急に立ちはだかったような衝撃を受けた。


ニュースに映る彼女の笑顔は当時よりも輝いて見え、その明るい声は私の心を一層みじめにした。

彼女と比べて、一体今の私は何なのだろう?

自分から逃げ出したくせに、急に彼女と比べてしまう自分が惨めで仕方なかった。


でも・・・・・本当は私だって強いんだ。 過去に向き合うならもう今しかない。

もう一度、やってやる。

彼女を、この手で倒して見せる。


身勝手すぎる考えなのはわかっていた。 でも私は心の奥底から湧き上がる情念に身を委ねるまま、近場のボクシングジムへ飛び込んだ。




「ボディが突き刺さったあっ!!

いやしかし左ストレートも同時に入っています!

第4R中盤、リング中央お互い一歩も譲らない打ち合いが続くうっ!」


彼女のパンチが深々と私の鳩尾を抉る。 もう何度もまともにパンチをもらってダメージが蓄積している時に、このボディ。 内臓が全て上下逆転したような苦痛に襲われる。

私は呼吸困難になりながら、 足がガクンと地に落ちようとするのを必死に耐える。

彼女は、その一発一発で強い意志を私に刻み付けてくる。

"どうして私を置いて行ったの?"


どうしてって。私だって、 天才のままで居たかったよ。 でもそうじゃなかった。

だからこそ、まだ終われない。 天才に勝ちたい。

天才にだって、 私のパンチは通用するんだ。


虚ろな表情で体勢を崩す彼女の様子から、彼女も深手を負っているのが明白だったが、それでも彼女は倒れることを拒否し、拳を構え直す。その様子を見て、私も必死に自分を奮い立たせた。


「両者倒れないっ!しかしダメージがあるのは確実です! ギリギリの消耗戦、先に根を上げてしまうのは果たしてどちらなのか!?」




もう、何R目だろう。

視界は濁ったガラスを通したようにぼやけ、聞こえてくる音はノイズのような、ぜーぜーという自分の激しい呼吸音。 世界はいつからこんなに狭くなったんだろう?

意識に厚い雲がかかっていて、 足だってもう自由には動かない。


彼女とは、リングの上でたくさん会話できたような気がする。

身勝手な私の想いも、伝わったと思う。

それでも、お互いに負けるわけにはいかない。

彼女は天才として。 私は凡人として。


軽いジャブでさえ、もらうと足がもつれ意識が飛びかける。さすがにもう限界だった。


私は大振りになることを一切いとわず、残された力を振り絞って、 彼女の顔面目掛けて右フックを繰り出した。

当たれ。当たってくれ。

私の拳が彼女の顔面に迫り、脳裏に KO を予感すると同時に、彼女のパンチもまた同様に私を捉えようとしていた。



激しい衝撃とともに私の頭の中で火花が散り、視界が色を失う。


そして、視界が徐々に明るさを取り戻し、ぐにゃりと曲がった眩しい照明でいっぱいになった。


何秒だったかわからない。

私は動けないまま、天井を見上げて立ち尽くしていたらしい。


ああ、そうか。

ここが、私の本当の限界。

ここを超えられるのが、彼女なんだ。


「ぶふぅっ」

貯まりに貯まったダメージを一気に開放するように、私の体からいろいろなモノが堰を切ったように溢れ出した。

その開放感から来る心地よさに抗う力は、もう私には残っていなかった。



わかっていたんだ。心のどこかで。

中途半端な私が、敵うはずないって。

でも、こんな私に本気になってくれて、ありがとう。

おかげで私は救われたよ。今までごめんね。

このまま、誰にも負けないで。


景色がスローモーションのようにゆっくりと後方へ移り、私はマットへ沈んだ。




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Redemption Redemption Redemption Redemption Redemption Redemption Redemption Redemption Redemption

Comments

Amazing boxing match! Please do more, preferably a KO ending!

sakata

🤩🤩🤩

いろはす

Thanks🤞 This match is over because main character is unable to continue.

いろはす

😍😍😍

BoxingFTW

I really like how you gave them some personality with the smiles. I also love all of the cross counters! Is the match over or is there going to be a few more pages?

spartwow

新プランのご支援ありがとうございます🤩

いろはす

スゲ~最高のボクシングマッチですね😃 あ、パッケージプランで変えました

Protoss


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