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新作短編 ある青年記者の顛末

普段とは違う形式のssを書いてみました。 約5000字の短編になります。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1、ある雑誌の記事 『奇跡の歌声、大スター依然として行方不明』 若干1○才にして夜の女王のアリアを完璧な技巧と感情をもって歌い上げ、その人気を爆発させた少年歌手アリサ・ユキムラ。 その後もボーイソプラノとして活躍を続け、「天使に祝福された喉」「奇跡の歌声」「魔性の歌姫」などと呼ばれた彼の名を知らない者は少ないだろう。 そんな彼が、突如として行方不明となってから一ヶ月が経つ。 連日ニュースを賑わせていた一件ではあるが、改めて経緯を記しておこう。 全国ツアーの最終日、公演を終えたその日の夜。 彼は〇〇ホテルを出たまま消息を絶ち、行方をくらませた。 数時間後、事態が発覚し通報。 警察も事件の可能性も含めて捜索に当たったが、手がかりすら掴めないまま今に至る。 まるで夜の闇の中へ消えてしまったかのように、パタリと足跡が途絶えてしまったのだ。 外部犯、内部犯、自発的な失踪……どの可能性も否定しきれていない。 そんな状況ゆえに様々な憶測がネットや週刊誌で流されたが、噂話の域を出ないうえに信頼性のあるものは皆無だ。 私生活のトラブルなどもなかったようで、これといった要因すら見当たらない。 そもそも彼が秘密主義だったこともあり、確たる情報と呼べるものは一切ないと言ってもいい。 一連の流れも含め、前代未聞の事態と言えるだろう。 アリサ氏については普段はホテルを出ることも稀であり、その行動自体にも疑問が残されている。 誰かと待ち合わせていた可能性が示唆されているが、関係者も含め調査を継続している。 【ファンの声】 「アリサくん、本当にすごかったんですよ!  透き通るような高音なのに、男の子らしい力強さもあって……。  小柄で、女の子みたいに可愛くて、髪も白くて浮世離れしてるっていうか、別世界にいる人みたいで……。  またステージで歌ってほしいな~」 「あの日も現地参加してましたけど、いつも通りでしたよ。  ……あ、でもアリアのところで一瞬だけ顔をしかめてたかな。  連日のステージだったし、流石にきつかったのかなって」 2、事務所社長のインタビュー 本日はよろしくお願いします。 アリサのことについてお聞きしたいということで。 ええ、私も長らくこの業界にいますが、彼のような逸材は初めてでした。 練習もストイックでしたし、トレーナーが指導する箇所がない位には完成されていました。 ただ……どれだけ技術を磨いても、あの喉だけは天性でしか得られません。 唯一無二の歌声でしたし、彼自身も歌だけに人生のすべてを賭けていた、と表現しても過言ではないでしょうね。 彼の普段の印象ですか? なんといいますか……とても律儀な子でした。 そもそも、アリサには身寄りがありませんでした。 縁あってうちに来ることになりましたが、そのときも「拾ってくれた恩を返す」と言ってくれて……。 その後の活躍はご存知の通りです。 もちろん才能は抜群でしたが、1人ではステージが出来ないことも彼は理解していました。 実際、何倍にも恩を返してくれたと言えるでしょうね。 素行についても、問題と呼べるものは何一つありません。 用意したホテルやアパートと事務所を往復するような生活でした。 ですから活動は順調という他ありませんでしたし、本当に心当たりがないんです。 全国公演も大成功でしたし、人気絶頂の中でこんな事になるなんて……。 ですが、いくら過ぎたことを悔やんでいても仕方ないですよね。 これからは、他の人員の育成に注力していくつもりです。 流石に……彼の帰りを待ち続けるわけにもいきませんから。 確かに莫大な損失ではありましたけど、それ以上に利益も残してくれました。 しばらくは事務所の体制について立て直すだけの余裕もありますし……アリサには感謝しかありません。 それに、最高の声のまま皆さんの記憶に残っているのは、歌手としては幸せなことかもしれません。 来年は公演できるかどうかも微妙でしたし……。 あ、いえ、こちらの話です。 お話できるのはこのぐらいです。 熱意のある方に来て頂けて、こちらにとってもいい区切りになりました。 忘れられない子になるでしょうね。色んな意味で。 3、ある業界人との会話 俺みたいなのに話を聞きたいとか、珍しい兄ちゃんだな。まだ若いのによ。 まぁ、ここの酒と飯を奢ってくれるわけだし、ありがたく頂くさ。 で、何が聞きたいって? アリサについて……か。 流石に表に出せないだろうし、お前さんの表情からしてスキャンダル目当てってわけでもなさそうだから、別にいいか。 飲みの席の与太話ってことで聞いてくれ。 残念だが、失踪についての情報はねぇんだ。あったとしたら出回ってるし、流石に発見する手がかりになるからどこかに伝えてる。 普通は、何かしらの話が入ってくるはずなんだけどよ。気味が悪いくらいだ。 ただまぁ、確かに凄い歌手だったけどよ、だんだん忘れ去られていくんじゃねぇか? 活動期間は短かったし……。 そもそも、戻ったところで先は長くなかっただろうしな。 ん、理由か? ……声だよ、彼の声。 ボーイソプラノってのは、そうそう出てくるものじゃない。 天性のものってのもあるが、表舞台に出てこれない理由がもう一つある。 長持ちしないんだよ。 アリサの歳を考えてみな?とっくに変声期が来ておかしくない歳なんだ。 あの声が掠れて、高音が出なくなって、別物になっちまう。 その重大さは説明しなくても解るよな? 年齢に合わせて選曲や歌い方を変えれば活動は続けられたろう。アイドル的人気だってあったし、事務所的にはそういう方向に舵を切っていくつもりだったはずだ。 だがな……それは奇跡の喉じゃない。 実際、本人もかなり悩んでたみたいだぜ? 中世のヨーロッパとかじゃあ、カストラートなんてやつもいたそうだが……流石に現代では無理だしな。 ……あぁ、そういえば。 黒魔術にハマってるとか言われてた時期もあったな。 そういう情報についてアリサが調べてるのを見た奴がいるんだと。 目撃談だけでまったく話題にもならなかったし、言った本人も今頃忘れてるだろうな。 気まぐれで検索くらいするだろうし、そういう年頃だって一言で片付く話さ。 ただまぁ、どこか人間離れした雰囲気のアリサが何を考えてたかなんて、俺には分かんねぇよ。 もしかすると……本当にそういうもんに手を出して、戻ってこれなくなっちまったのかもな。 アンタも、あまり深入りすると、戻れなくなるかもしれねぇぜ? 5、とある淫魔との会話 私を召喚したのは、貴方かしら? 珍しいわね、こんな方法で人間界に何度も呼び出されるなんて……。 アリサ? ええ、知ってるわよ。 あの子を追いかけて、徹底的に調べ上げた? ……すごい執念ね。 ええ、確かにひと月前、アリサって子が私を呼び出したわ。 こうやって私を召喚してすぐ、契約をしたいと言ってきた。 「お金も、地位も別にいらない。この声のまま歌えればそれでいい」 ……って。 私の姿を見て、欲情ひとつしないまま、まっすぐ見つめながらね。 面白かったから、彼の望みを叶えてあげることにしたの。 別に難しい話じゃないわよ。 私が解決策を示して、あの子が乗って、契約成立。 簡単な話でしょう? これ以上は、私から言う気はないわ。 どうしても知りたいなら、本人の口から聞くことね。 彼なら魔界にいるわよ。元気にしてるし、会ったときよりも楽しそうにしてるかも。 そんなに気になるなら、案内してもいいわよ。 私と契約することが前提だし、片道切符だけど。 ……へぇ、躊躇しないのね。 こんな変わった子が連続で来るなんて、奇遇なものね。 じゃあ、私の手を取って。 あぁ、最初に言っておくべきかしらね。 魔界へようこそ。 6、公演直後のインタビュー ふぅ……。 あ、ごめんね、汗すごくて……。 全力で歌うから、どうしても衣装がビチャビチャになるんだよね。 人間のお客さんなんて久しぶりだよ。 熱心のファンもいたけれど、魔界までやってきてインタビューされるのは想像してなかったな。 それで、何が聞きたいの? …………。 うん、失踪したのはボク自身の意思。 あんまり未練はなかったかな。家族もいなかったし、歌以外のことには興味なかったし。 社長さんにはお世話になったけど……それは商品としてだから。 一通りのステージを終えてたし、いちおう筋は通したと思ってる。 失踪した理由を聞きたい? うーん、誰にも言うつもりはなかったんだけど……ここまでボクのために頑張ってくれた人に黙ってたくもないかな。 ボクには、この喉しかないんだよ。 何もなかった僕に、一つだけ貰えた神様からの贈り物。 自分の声を聴いている時間が幸せだった。 ボクは、この声で歌っている自分が好きなんだ。 でも……。 身体の成長だったり、周囲の反応だったり。 発声してる感覚で、終わりが近いって分かっちゃったんだよね。 だからって、止められるものでもなかった。 色々考えたけど……下手なことをしたら、普通に歌うことすらできなくなっちゃうし。 この声を、喉を保てるなら……ボクは、悪魔とだって取引きする。 比喩でもなく、本当にそうなっちゃったけどね。 召喚した相手が淫魔だと知ったときは驚いたけど……面白がって受けてくれたのは、運がよかったかな。 それで淫魔と契約して、眷属になったってわけ。 性別は男のままにしてもらったけどね。 正確にはインキュバスになるのかな? 肌もちょっと青白いし、身体はむしろメスっぽくなったけど……。 でも、この声は変わらずにいられるみたい。 人間でいられなくなったけど、ボクにとってそれが一番の望みだったから。 え、見た目も、前より魅力が増した? ……ふふっ、予想外の言葉だけどとても嬉しいよ。 どうやら納得はしてもらえたみたいだね。 じゃあ、今度はボクの方から1つ、いいかな? キミさ…….。 ボクに、惚れてるでしょ。 もっと言うと、ボクに恋愛感情を抱いてる。 淫魔って、そういうのに敏感な存在だからさ。肌で感じるというか……わかっちゃうんだよね。 そもそも普通のファンだったら、完璧に消息を絶ったはずのボクを見つけるまで追いかけたり、戻れない魔界に飛び込んだりしないよね。 後先とか考えるつもりのない、 以前だったら、お茶を濁して終わってたんだろうけど……。 今は、むしろ嬉しいかな。 胸が高鳴ってるし、身体が疼いてきちゃってる。 歌だけあればいいと思ってたけど……このカラダになったせいかも。 キミのことが欲しくなってきちゃった。 ねえ、ボクのものになってよ。 7、魔界新聞、一面記事 『あの人間界からやってきたスター歌手、アリサに急報!』 熱烈なファンを爆増させている元人間のアリサ・ユキムラきゅん。 人間の頃から卓越した歌唱力を持ち、さらに淫魔となって色香をまとった姿は最高の美少年として魔界中で話題を席巻した。 活動を始めて一ヶ月ほどにも関わらず、すでに魔族にとっても稀有なアイドル的存在となっている。 彼を狙っている魔族も多く、魔界貴族すらアプローチをかけているとの噂もあったが、 ついに彼自身が伴侶を見つけたことを大々的に発表した。 お相手は、アリサを追いかけて魔界までやってきた人間の青年。 歌に関しては素人らしいが、アリサに惚れこんで行方不明になった彼について徹底的に調べ上げ、魔界のステージ裏まで押しかけてきたとのこと。 まるで古い恋愛譚のようだが、彼は本当にその通りに結ばれることとなった。 さらに、アリサは相手を魔界中に知らしめるため特別講演を開催。 演目は主人公が花嫁である相手に愛を告げるシーン。 彼をステージに立たせ、用意されたベッドの上で初夜の交わりを実際に行うという前例のないものとなった。 やはりというべきか、会場中の魔族たちの注目の的になったことは青年とって想定外だったらしい。 これはアリサが意図的に演出したもので、青年に知らせずにステージ上で押し倒したものと思われる。 観衆に見つめられる中で羞恥に動揺する表情や、アリサきゅんに責められ、人目を憚る余裕がなくなって喘ぎだす声音の変化などは、何ものにも代えがたい興奮と感動を与えてくれた。 堕ちていく姿を生で目にした観客の淫魔たちは、目の前で行われる初夜に感動と一抹の寂しさを感じながらオカズにしまくったという。 様々な感情はあるだろうが……堕落を是とする淫魔にとって、最高のステージとなったのはいうまでもない。 そして元青年、現花嫁の淫魔は、アリサきゅんのマネージャー兼伴侶という形で活動をサポートするらしい。 今後の彼らの活躍が楽しみでたまらない。 (了)

Comments

ありがとうございます! 普段はセリフが少ないスタイルでしたので、意識的に会話メインの短編を書いてみました。 楽しんで頂けてよかったです!

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ラブラブハッピーエンド! それでいて背徳的でたまりませんね

瀬谷(アイコンは渦巻トグロウ様)


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